昭和１２年６月１日（火）晴れ。午前八時十分発、中津に至り巌をして奥平氏を在否を尋ねしむ。在宅の旨に付き、直に至るに、氏は既に余の訪ふを知り外出す。此の一事万事休するを知る。玄関にて話し誠意なきを認め、一旦巌方に寄り、書式を受取り第二の方策を講ずることとせり。巌は後藤寺の大原は如何かと云ふ。余は大原の人物を好まぬも、此の場合藁をも掴めの意味もあり、遂に不本意ながら同意せり。即ち時間に余裕なき為、自動車を呼ばせたるも待つこと暫く、遂に三分計りを剰すに至り来る。巌と一緒に之に乗り駅に至れば、一分遅れにて発車後なり。不得已（やむをえず）バスに変更せり、５０銭。十分待ち発車、途中道草喰ひ一時間十五分にて行橋に達す。此処にても時間と間に合わず、再び待つこと十五分、漸く発車。一時間十五分にて後藤寺着。大原は病床に在り神経痛と云ふ。内山医師に罹り、毎日注射を重ねつつあり。既に四月二十八日より一ヶ月余、猶恢復に至らず。当日は給料日と見え、母堂澄江氏と封筒に仕払高を計算して納入し居れり。何分本人病臥し、如何共詮方なし。二時間近く居り、五時三十分、暇乞いして出立す。バス４０銭、恰度途中に出会す。之れに乗り飯塚に至る。更に博多行きに乗換ふ。十五分間待合いあり。六時四十五分発車、八時五分、呉服町着。電車天神町に至り、木村屋パンを４０銭求め皈宅。彼此九時なり。夕飯を済まし早く寝床。中尾氏より来翰あり（小包中に和歌あり）。
昭和１２年６月２日（水）
晴れ。朝道子に巌の三等？局長問題、及び中尾さんが昨日の小包は内容豆人形三ヶ入り、緑児欲しき意味を歌にて表わし、良人様と宛名を記載しあるを訝かしむ。其等の疑団を解消せしむべき必要を感じ、道子を招き事実を通告す。而して本日小倉に梶沼喜六氏を訪ふ。十時二十八分準急に乗り、十一時四十五分頃着。喜六氏在宅、二階に通し歓待さる。さて身元引受人問題を切出す。快く承諾さる時の嬉しさ。併し証明は若松、高野、日橋各役場に跨り、数日を要する見込みに付き、其の含みにて処理することに了解。三時三十五分佐世保行き準急にて、四時五十一分着。電車及びバスにて皈宅す。然るに東京より井尻碌氏来宅あり。道子対手し、話しが尽きたと称し居れり。余行き子供時代の態度を繰返して昔咄をなし、夜十時寝床。余は階下三畳へ、蚊軍攻撃急なり。夜半起床、蚊遣香を炊く。輾転反側二三時間位休みたるのみ。此の度の引受人問題を通覧するに、中津に一日に出発する際、停車場にて、三四拾銭入り蝦蟇口を掏られたる此朝より、不首尾を痛感するに値するもの一にして足らず、天なるかな。
昭和１２年６月３日（木）
曇天。井尻氏、唐津行き九時四十分の汽車にて出発。余送り簑島駅まで。猶時間に余裕あり、其の附近を散歩し再び箕島駅に皈る。少時待つ、四十分汽車到着、移乗。同氏留守の間手紙書き、午後六時を過ぐるも不来、或いは西公園でも独りで見物し居られしにあらずや等、噂し居たるに七時過ぎ来着。聞けば鏡山に二時間以上居り、東唐津駅までの間に発車時間の関係上、大分待ち居りたる由。次いで東唐津駅より徒歩、渡船、舞鶴城に至り、天守閣に上がり眺望を擅（ほしいまま）にして、六時の発車にて漸く只今帰着せしものの由。一緒に夕飯を済ます。ビール一本、昨夜と同じに野菜料理を希望するとのことにて、澄子色々心配して造る。九時を過ぐ、風呂に案内せんとせしも行かず。手拭いにて手足を拭ふ。十時寝床。
昭和１２年６月４日（金）
此日は予報は曇り雨模様、然るに朝来晴天。九時過ぎ用意して出発。右頬に腫脹多少赤味あり、熱発の傾向ありと云ふ。相談所に案内することにし、岩田屋に荷物の保管を依頼し、一直線に相談所に至る。岡部君を訪ひ治療を頼む、乃ち多数患者を排して診て下さる。診断は丹毒と称され安静を要求さる。小便を験査し糖尿病の気味はなきも、腎臓に故障あり、且つ血圧は１７０ありと云ふ。爰に於いて局部を按纐？し水嚢を以て冷却、熱を下降せしむること。然るに検温するに発熱なし。此の上は腫れの引くまで静養すれば可なりとありて、西公園をも見ず、此の侭、佐賀に出発することに変更。岩田屋に至り土産品を求められ、余トランクを持ち駅に向かふ。０時３７分発は鳥栖以西連絡せず、次の列車は長崎行きなり。夫れまで一時間余待つを要するも、鳥栖にて待つこととし同時刻出発さる。余入場券を求め見送る。到着の際、車を雇ひ非常に面倒して尋ねられたる由に付き、夫れに懲りて電報にて到着時刻を通知し置かる。同氏より世話になりし礼にと、鶴乃子菓子を下さる。一時帰宅。鶴乃子を大原に賜る。鉄道便に附託、久子に依託す。送料拾五銭。此日鈴木貞江氏より五十銭、市役所へ送付の振替貯金払戻証を返送し来る。暑熱強く流汗淋漓。遂に夜に至るまで一時曇りしも、概して晴天を失わず。
昭和１２年６月５日（土）
朝来曇り、来客去りし痕は淋し。澄子にビール代壱円、外に壱円与ふ。来客に対する決算は物質的には猶多かりし如きも、割合に多からざりし。急に閑散。輪氏に手紙を書く。鈴木貞江氏にも詳細返事と共に、礼状を発送す。午後四時頃より降雨の姿となる。其の儘持続したるも、此の儘梅雨季に入る如き嫌悪の模様なりし。夜子供入浴、余、留守居。十時半頃、仏法僧の啼音放送により聞く。皇太后宮、伊勢行啓三十六日間御旅行。
昭和１２年６月６日（日）
朝来降雨。唐津より恩給請求書送り越し、捺印方申越しあり。久子昨日より通常食を喫し、本日も歯科医かかり行く。本日巌よりの通報によれば、石丸先生の斡旋にて深沢六郎氏引受人に承諾せられし由。夜早く寝床。恩給請求書発送せり。
昭和１２年６月７日（月）
夜来降雨。降りては歇み、歇みては降る。豪雨とならず全く梅雨の状勢なり。朝食中、郵便物到着。道子に対しても美和氏より手紙あり。余り余に対し屡々にて、気の毒と感じられし如し。積雲重畳、容易に晴天を仰ぐ能わざる憾みあり。昌江より葉書にて、道子に出佐を通告越せり。其の態度、余りに軽率の嫌いあり。松原氏より直接余に通知ある様、通告せり。四時前後、雨歇む。帝都に近き四国海岸に於いて、雄図を挫折したる仏蘭西飛行家ドレ、ミケレッチ両氏は、萬斟の憾みを飲みて、本日帝都を去り帰国の途に就く。
昭和１２年６月８日（火）
夜半より降雨、時々歇む。中尾氏発送の神様の菓子折り小包到着。同氏宛て手紙書き初めたるも、便箋なく中止。振替払出し書の払戻しに際する手続きに付き、法規を見る。受取りに行かんとせしも時刻遅れたり。午後八時五十分頃より蚊帳に入る。道子等、風呂行く。
昭和１２年６月９日（水）
朝の間多少曇り、次第に快晴となる。正午近く髯を剃りて簑島局に行き、例の振替払出し書を提出すれば、渡払い局所変更手続きの要ありと称す。乃ち法規を示して取扱い方を懇示すれば、漸く納得す。春吉に至り、大内田氏を訪ふ、午餐を喫しつつあり。立ち咄、病気の容態を聞き、辞して松屋に至り便箋１８銭にて求め、新柳町に至り白梅１４銭にて求め、一時皈る。晴天暑し、風多し。中尾氏より来翰。硝子窓大分曇りたるを以て、硝子を掃除せり。明日も晴天らし。夜十時よりライト・ゼ・レター・ツー・ナカヲ。
昭和１２年６月１０日（木）
朝快晴。六時前投函。道子等、三デパート行、余留守居す。拾参円貯金即時払いし、道子に余の夏袴を松屋より購入せしむ。九円五十銭。夏足袋八十銭、計十円三十銭。午前十一時より四時半まで桑原氏来宅。明後土曜山崎氏宅に来集を提議、五時帰らる。午後より次第に曇る。寝巻等を陽に乾す。午後七時再び晴空を見る。昨夜碌々眠らざりし。オリンピック冬季競技、ワルソー会議にて札幌に開催に決定。手紙朝発送及び夕刻にも同断。
昭和１２年６月１１日（金）
曇り勝ち、入梅季の天候らし。松原氏より来翰。道子来佐方、内証に対する配証は既に手配済み。昌江此の消息を知らざりしもの。第二回以後の保険料は、本社より直接申越しありたるは、不得已（やむをえず）も代理契約店に払込む定款なり云々。道子此日佐世保に出発せしめ、午前九時三十分は都合よきも、一時間にては準備出来ぬと云ふ。午前十一時二十分に出発せしむ。余より千円払戻し金定款証を交付、通帳と共に道子に預く。昌江より申出による。余は午後より市役所行、寄留届け提出。謄本と対照「道」とあるは謄本「道子」となり居るとて、訂正せり。印鑑証明を受け、抄本は原籍地より取寄せよとて、又財産調書は土地所有証明書なら交付するが、財産は証明不能とて拒絶さる。
昭和１２年６月１２日（土）
航空ペーゼント、雁の巣飛行場に於いて、午前十時より挙行。朝来曇り、少々雨、後次第に霽れ。余は十時市役所に至り、再び形式が悪いとて戻され、十一時三度目には坪にて表示され居らぬとて、地籍の示す処により六畝十四歩として証明せり。一時帰り、久子と雁の巣へ行くべく新柳町より乗車す。久子乗遅れ其の侭、余独り新博多駅に至り、往復四十五銭にて奈多行きに乗車、一時半到着。立続けにて一時間、編隊飛行中の高木飛行を感心して見る。最後に神風朝風の飛行ありて閉式。奈多駅到着三時、駅は人の波数百名を数ふ。而して僅かに二列車にて運転す。回数は多くとも容易に乗込めず、押合う態、死物狂いなり。四十分余り待つ。全く道義を失し我勝に押分け乗込む態、凄まじなんと云ふばかりなし。四時過ぎ発車、帰宅は五時半。久子築港より戻り、大いに小言を聞く。夕食を済まし、六時半より山崎氏宅に行く。誰も来て居らず。七時半桑原氏来、八時半まで六名を算す。多田氏三周忌を第三日曜日に営むに付き、意見を持寄る。十時を過ぎ、猶退去せず。余辞して帰る。
昭和１２年６月１３日（日）
晴天、梅雨季に入り珍らしき現象と謂ふべし。東北電力より利益配当受取方通知あり。一株四分利２４，１０９銭、乃ち拾株に付き２円４１銭となる。転居届と共に提出せり。明日小倉に行くことに決せり。財産調書未着一ヶ所とあり、到着分を貰ひに行くため。道子此夜は来るかと、澄子は待ち心地にて居りしも、遂に不来。此夜九時半頃寝床。
昭和１２年６月１４日（月）
晴天に近し。時々帰途の汽車中に陽光入り、暑気強かりし。往路は曇天、雨降りやせしかと恠（あやし）まるる程なりし。汽車は午前十時二十八分発準急、往復２，１４円。梶沼氏宅に来客あり。モラロジー同人として、話題は総て自分を磨く方法にて、長座して居ても清々しき心地す。二時過ぎ辞去す。少時駅に待つ。此の間に葉書にて中氏に返事出す。昨二号配達便なき為、今朝配達ありし長文に対してなり。午後四時帰宅。道子家にあり、対手の男に逢わずに皈ると。バナナ三本食後摂る、少し多かりし。二度程水浴して寝る。千円払戻し得ざりしとて持皈る。
昭和１２年６月１５日（火）
晴れ。朝、桑原氏来宅。今回の多田氏三周年法要を営むに付き、同志に通知状を出すこととなり、其の表書きを承る。二時間計り、十一時終了。市役所に身分証明願いを提出したるに、原籍に非らざれば不可なりと却下、皈りて鈴木貞仁氏に手紙出し、料金参四銭、小為替にて久子に投函せしむ。余は千円の払戻しを簑島局にて手続き、同時に振替、自己口座に払込む。別に文句も謂わざりし。昌江口座に振替ふ。広美より写真二葉、雛祭りの家内全員、女子のみを相対に撮影したるものを送り越せり。余独りの分は未だし。大竹泰より手紙は、此の間拾六銭昇給、１，３１円となれりとあり。慰安会は千葉県館山に船にて行き、頗る賑やかであったとあり。広美には一枚四十銭の割にて、三枚分一円弐拾銭振替にて発送せり。此夜中尾氏本部へ団体参加、夜行にて出発の筈、余返書認む。風冷ゆ。
昭和１２年６月１６日（水）
晴れ、午後より曇り。昨及び今、着物乾かして貰ふ。鈴木貞江氏より抄本送り来ず。電報督促せんとし、久子医かかり出発後にて見合わす。午後二時、二号便到着。早速唐津に送り、他に一通は今度の書類の一部に始末す。鈴木氏十四日に発送したるもの。身分証明が到着すれば萬事整頓す。為念二十一日迄整備方に付き、梶沼氏に通知す。夜秀夫来たり。今回一斉昇給ありしことを通知す。雇い員拾参銭、判任四円。而るに東京大竹は十六銭と比し参銭尠し。道子等風呂に行き余居残る。秀夫、十時道子等皈宅後皈る。十時二十分寝床。
昭和１２年６月１７日（木）
大体晴れ、時々曇り。地方により驟雨の模様あり。午前中木下君より葉書、愛国葉書を使用し来たる。二号便に中尾氏より、大阪と金光とより扱う函のもの一緒に来着。木下君に詳報したり。援助を請ふ旨申遣る。三時頃より西風強く、快晴となる。早く寝る。
昭和１２年６月１８日（金）
晴れ、多少曇り。四時頃より快晴。中尾氏よりの小包到着、吉備団子。鈴木氏より返事来る。道子等風呂に行く。「ニュース」ヘレン・ケラー女史来訪記念事業として、盲人会館建設を企図することとなれり。三十九歳のヘレン・ケラー女史は目下北海道講演中。来月八日再び東京に来たり、八月帰米の由。
昭和１２年６月１９日（土）
晴れ後曇り、驟雨あり。夕方より幾らか良くなる。中尾氏より午後手紙あり、返事す。須藤さんより葉書。二十日より二十二日まで江口先生、手掌療治ある為、二十日の慰霊祭は不出席とあり。
昭和１２年６月２０日（日）
晴天、十時出発。小竹、原氏の熊本土木請負師の下に居りしが、夜行にて来らるとて、既に托鉢して居らる。余受付を命ぜられ、他の二名と一燈園に居る。飯塚の高橋氏新妻も来て居らる。総勢三十余名。会場を城西橋端、柳原先生宅に変更。四時開会。柳原先生、安藤先生主会幹部たり。開会辞勤行、夕食後慰霊祭座談会あり。九時終了。各自感想談の発表あり。九時閉会後、会計決算を済まして、一円十五銭剰余を桑原氏に、拾円を一燈園内多田氏遺児に贈る。記念菓子頂き、十時発。十一時近く到着。水浴寝床。此日市内会員会費５０銭当て１２，５０、市外弔霊金拾九円五十銭、而して食費３０銭づつ十二円、通信費及び土産菓子８銭づつ３，２０等を差引き、１１，１５円刺余金を生ず。松居氏女婿夫婦臨席、感想談を述べらる。婿君は大学助手。鹿児島の人、多田氏の斡旋にて養子となる。
昭和１２年６月２１日（月）
晴れ。十時小倉に行く、既に電報を発送督促せりと。喜六氏風邪、病臥しあり。即ち起きて色々咄さる。再び電報にて督促さる、気の毒に不堪。午後一時過ぎ出発。一時間待合室に居る間、喜六氏寄贈の、大阪山口商店に於ける白木先生講演、モラロジー及び最高道徳の筆記を、印刷に付し頒布せし冊子に目を通す。一時余りの経過時間に読了す。山崎氏宅に立ち寄り、昨夜柳原先生より頂きし家庭教育通と云ふ本を、山崎氏に立換えて貰ひし。八十銭を返謝す。夜八時過ぎ水浴、九時半寝床。夜は風冷え、清々し。町北村役場分財産調書来着は、神慮に出でたるものと思ゆ。
昭和１２年６月２２日（火）
朝の間晴れ、次第に曇天。怪しき空模様。午前十時三十分、道子等余一人残し外出。松屋に行きたるらし。久子のみ二時過ぎ皈り、他は四時になるも皈らず。佐世保より道子宛電報。午後七時玉屋にて会ひたしと。昨山崎氏より余の家を問われしが、本日葉書にて図面を画き来訪を求む。昨停車場行き電車中、元博多局長山村氏に偶然面会す。午後六時より顔剃り、着物を改め羽織袴にて、七時に二十分前出発す。バス三区、西中洲より徒歩、猶七分を余す。待てどそれらしき人影なし、食堂にも居らず。ラウドスピーカーにて全館内に呼びかく、反響なし。五十分遂に皈途に就く。福岡局に電報を、松原氏宛発送し皈宅。水浴し十時寝床。
昭和１２年６月２３日（水）
晴れ曇り半々。寝具乾す。松原氏に手紙出す。厳粛なるべき結婚問題を取扱う態度の茶飯事視らる、不真面目さ頗る自尊心を傷つけられたる憾みありと申遣る。午後福岡メソヂスト教会より、女宣教師、行橋の教会牧師の葉書を持参して入信を薦む。皈りに讃美歌を唄ひ、バイブルを誦し祈りを捧ぐ。余裏通りを教えて、途中まで送る。日中暑気強し、夕方より風涼し。九時半寝床。
昭和１２年６月２４日（木）
朝二時起床。小倉へ財産調書を返付、見積もり売買価格掲記方要求す。道子澄子外出、久子留守居す。夏衣求め来る。十一時頃より四時過ぎまでかかる。晴れ、時々曇る。
昭和１２年６月２５日（金）
曇り、降りそうな模様。久子上緒に簑島局に向かう。途中、何か書附け忘れたりとて久子戻る。余独り局に行き、年金を貯金に戻入れ、別に百円即時払いす。三時過ぎに至らざれば金出来ぬと云ふ。承知して出掛く。途中、小倉に電話する料金の持合わせすらなきを感知し、保険局に秀夫を訪ね、百円の即時払いを求む。次いで岩田屋の新聞展を見て皈れば、久子皈り居る。玉屋に着物地を返却に行きたる如し。二十五銭にて小倉に電話したるに主人不在、番頭に咄す。午後五時過ぎ理髪、丸坊主３５。水浴、十時前寝床。
昭和１２年６月２６日（土）
昨日午後より降雨。九時四分に乗車すべく三十分前出発、猶十五分程剰る。風少しく、而して雨は時々歇む。零時十四分安着、電車にて逓信局に行く。村上係長あり、書類提出す。課長局長新任、食堂より皈って来らるるを待ち両者に挨拶。書類は無事通過す。三時五十五分発車まで二時間待つ。熊本は不便なりと感ぜり。七時半竹下駅より徒歩。スシ２０銭求め来たり、子供等に与ふ。
昭和１２年６月２７日（日）
降雨。夜半より猛烈、朝に至りて多少緩和。切符は熊本にて７，２３、通しを求め置きたり。午前十時二十八分出発、準急なるに時々停車す。洪水線路を閉塞したる個所ありし為なり。水田は一面の海の如き観を呈せり。途中にて電報す。夜十一時、勹瓦甚（ほうがじん）？氏迎ふ、一緒に同氏宅に至る。郵便取戻し方依頼す。５０銭かかると云ふ。雨甚だし。
昭和１２年６月２８日（月）
外出せず、夜市内を散歩、公園を覗き皈る。
昭和１２年６月２９日（火）
十時頃出発。都一巡４５０、四時五十分発。夜を徹して、十時十二分着。昌成氏、正午来たり。色々話さる。夜は氏病気、早く寝る。貢氏来、色々話す。
昭和１２年６月３０日（水）
此日は斯くして半日を昌成宅にて過ごせしなり。